猫の名はちょいと。

猫と映画好きが綴る、ささやかな日常

「お手伝いしましょうか」に救われる

写真展に行くために、恵比寿の街をぷらぷら歩いていた。

すっかりクリスマスモードになった休日の恵比寿には、家族連れも多い。

 

すこし離れたところから、子供がギャンギャン泣き叫ぶ声がきこえてきた。

3歳くらいの女の子が、泣きすぎてパニック状態になっている。

隣には小さい赤ちゃんを抱っこしているお父さんがいて、もうお手上げだという感じで女の子を無視していた。

 

女の子がその場に座り込むと、お父さんは手を引っ張り、引きずった。

泣き叫びながら引きずられていく姿は、穏やかな休日の雰囲気のなかで異様な光景だった。

 

そこへ、50代くらいのマダムが「お手伝いしましょうか」と明るく声をかけた。

お父さんは恥ずかしさから断りかけたけど、観念したようにうなずく。

ありがとうをいう気力も無く、項垂れただけにも見えた。

マダムは女の子を座らせ、ぐじゃぐじゃになった髪と顔を整えて、頭をなでながら優しく声をかけた。

 

それはとてもスマートで心優しい助けだった。

母親になった人であれば、力づくで子供を引っ張るお父さんを怒りたくなる気持ちもあるだろう。でもきっと、お父さんだって泣きたいくらい辛かったはず。

その気持ちを理解し、プライドを傷つけることなく、目立たないようにそっと声をかけたマダムは素晴らしい人だと思った。

 

今日は写真展よりも、その光景がいちばん心に残った。

あんな素敵なマダムがいる限り、世の中まだまだ捨てたもんじゃないな。

わたしも誰かに手を差し伸べられる人間でありたい、と強く思う。