猫の名はちょいと。

猫と映画好きが綴る、ささやかな日常

母はいつも動じない

深夜、玄関の前でセミが力尽きた。

ジージーともがいている音が夜中ずっと聴こえていて怖かった。

わたしは昔からセミが苦手だ。

 

そういえば母は、セミにもゴキちゃんにも、貞子にもミザリーにも、猫が玄関先にそっと置いたコウモリにも動じなかった。

むしろそれを怖がる父親や子供たちを見て、「ばかねーぇ」と大ウケしていた。

 

子供達が小さいころ、母は夜になると、柱の影から不気味な顔でじーっと見つめてきたりした。それに気付いた誰かがぎゃぁっ!と叫ぶと涙を流してゲラゲラ笑っていた。眠る前に興奮させてどうする。

 

小さい頃はそんな母を人間離れしていると思っていた。なんにも怖くないなんておかしい。

だけど同時にとても頼もしく思っていた。なにも怖くない母といれば、なんだって大丈夫だ。

 

わたしは当時の母の年齢に近づいているが、やっぱり虫が苦手だし、寝る間際に貞子のことを思い出すといつまでも眠れない。情けない。

 

どれだけ歳をとっても、経験を積んでも、きっと母には到底叶わないのだ。