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幼少期の記憶力がすごい作家たち-西加奈子編

本を読んで感じることは色々あるが、その中の一つに「忘れていた幼少期の気持ちを思い出す」というのがある。

 

私は人よりも過去の記憶が薄く、他のみんなはよく覚えてるな〜と感心することが多い。母に言うと、「幸せな証拠だねぇ」と呑気な答えが返ってきたけど、どうなんでしょう。

 

それでは、私が個人的に“幼少期の記憶力がすごすぎる!”と思う作家をご紹介。

 

まずは、西加奈子

 

この方はデビュー当初から、嘘のない、ピュアで真っ直ぐな文章を書く。それゆえに、読んでいるとウーッ!心がえぐられる!という瞬間が必ず訪れる。

 

例えば『漁港の肉子ちゃん』は、ワケありの母親に連れられて漁港で暮らすようになった女の子の話。

 

その街には東京から出戻って来た、歳上のお姉さんがいる。田舎臭い街の中で、そのお姉さんだけはスタイリッシュに東京の言葉を話し、いつもブラックコーヒーを飲みながら仕事をしている憧れの存在だ。

 

ある日、その街に東京からカメラマン部隊がやって来て、雑誌の撮影を始める。そこで女の子は、本物でしかも現役のスタイリッシュな人々を目にする。

 

大興奮でお姉さんにそのことを話すと、彼女は不機嫌になって、東京を馬鹿にするような発言をした。その瞬間、お姉さんはものすごくカッコ悪い存在になってしまう。

 

他の大人たちとは違って、広い世界を知っているはずのお姉さんは、東京に未練タラタラの冴えないお姉さんだったことに気がつき、女の子はひどく悲しむのだ。

 

…わかる、わかるなー。憧れの存在には、憧れのままでいて欲しかったのに。いつまでも格好良くいてほしかったのに。自分が新しい世界を知ることで、価値観がガラッと変わってしまう。

 

憧れていた先輩も、アイドルも、あれ?思ってたのと違う?と気がついた瞬間にとても切なくなるのだ。でもそうやって大人になってきた。

 

西加奈子は、そんな切ないような恥ずかしいような気持ちを、いつも思い出させる。この人、よく覚えてるなー、感受性豊かな子供だったんだなーと感心するばかりである。

 

ご本人は度々テレビにも出演していて、その人柄もとても素敵なのでぜひ見ていただきたい。